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3月 11 2009
酒のある風景 ネパール プリント
2009/03/11 水曜日 00:00:00 JST

シェルパの疲れ癒す素朴な酒

著者:料飲専門家団体連合会事務総長 右田圭司

蒸留器があるネパールの台所


 

一瞬、山腹に突っ込むのではないかとヒヤリとしましたが、飛行機は何事もなかったように、谷間にあるネパールの首都カトマンズに到着しました。

 カトマンズは昔から豊かな土地で都市文明が発達していたため、現地でもあこがれの地とされています。現在は商業経済の中心地ですが、山岳や農村の人々は今でも「ネパールへ行く」というのが「カトマンズへ行く」という意味なのだそうです。

 インドに接する地域からヒマラヤの高地にいたるまで、変化に富む国土に暮らす人々の食生活はバリエーションに富んでいます。ただ見た目はインド料理に近く、部分的に、めん料理や餃子など中華料理の影響が感じられます。

ネパールの日常料理は「ダルバート」。豆のスープにご飯、野菜のおかず、漬物がワンプレートに出てきます。ネパール式定食といったところでしょうか。私は断念してスプーンで食べましたが、本式は手ですべてを混ぜ、上手に口に入れます。

家庭では、おかずは一品程度と質素なものですが、その味は“おふくろの味”として各家庭で大切に受け継がれています。インド料理と同じくスパイスを多用しますが、辛くないあっさりとした味付けです。

 今回の旅でよく見掛けたのが「モモ」という蒸し餃子。おなじみの形のほかに丸い形もありました。これには水牛の肉が使われており、どこかなつかしい味がします。モモの専門店があるところをみると、よほどファンが多いのでしょう。

 素朴で独特な酒があるというので、シェルパ民族が住む地域を訪ねてみました。山岳民族であるシェルパ民族は、昔から物資の交易をなりわいとし、非常にたくましく働き者です。彼らが好んで飲むのが「チャン」や「ロキシー」というお酒。材料は基本的に雑穀で、主にシコクビエが用いられます。個性的なのが草をはじめ、木の皮や根、トウガラシ、ショウガなどを混ぜた草麹をつかうこと。各家庭でかめやポリタンクに仕込み、チャンが出来上がります。このチャンを単式蒸留器で蒸留したのがロキシーです。これは初留も後留も含めたもので、技術としては初歩的な蒸留方法といえます。

チャンの飲み方は、トゥンバという専用の容器に入れ、熱湯や水を注ぎアルコールが溶け出すのをしばらく待ちます。竹筒のストローで飲みますが、細い切れ込みが何本か入っており、これがシコクビエのつぶつぶを漉す役割を果たしています。全部飲んでしまっても、またお湯を注いで楽しめます。チャンのアルコール分は7~8度で決して高くありませんが、高地でしかもストローでアルコールを吸うので一気に酔っ払ってしまいます。 ここでおつまみとして出てきたのが、ゆでたジャガイモと卵。これに独特な辛味調味料をつけて食べますが、これが新潟特産の寒造里(かんずり)

に似て大変美味しく、さらにお酒がすすんでしまいました。

シェルパ民族のおじさんが、面白い話をしてくれました。まず、チャンを2つ用意して両方にお湯を注ぎます。そして、まだ十分にアルコールが出ていない片方のチャンを飲み始め、1杯目が終わるころ、時間が経過してアルコールが十分抽出されたチャンを楽しむ、というテクニックです。これには一同大笑い。彼らと意気投合した瞬間でした。なるほど、酒飲みのやることは世界共通。最後はロキシーで乾杯するのも忘れませんでした。

 

 



 

 


 
 



 
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