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「食事がまずい」などと不名誉なレッテルを貼られている英国ですが、私の印象は正反対。今回は、お酒も料理も楽しめる英国を訪れています。
まずはお酒から。ロンドンから南へ70キロほど行ったルイースという町では、今でも昔ながらのエールを造り続けています。古典的なエールはリアルエールと呼ばれ、フィルターを通さず、殺菌もしない、酵母が生きている上面発酵のビールをいいます。製造工程の最後に樽詰めをしますが、栓をする際、まず大きい栓をして、その上に小さな栓をします。この小さな栓は酵母がまだ生きているため、販売店に届いてからサービスの人がその栓を調節するためにつけています。リアルエールが大変自然なもので、口に入るまで生きていることを感じさせてくれる光景です。
ロンドンへ戻ってエールを楽しむには、やはりパブを置いてほかにはありません。そのひときわ目立つ看板を見るたびに、酒飲みのための目印だと勝手に思っています。早速手に持ったエールは甘さが濃厚で香り高く、いくらでも飲めそうです。エールにはペールエール、ダークエール、ブランエール、ビターエールなどさまざまあり、飲み比べてみるのもよいでしょう。
一部のパブでは英国の伝統料理を出してくれます。私が通いつめたパブは素朴な料理が多く、日替わりのシチューは最高でした。豆を裏ごししてあり、すきっ腹に染み入るような味です。
パイは、肉類が入ったもの、デザートになるもの両方あります。自慢のカスタードクリームを添えて食べますが、まさに英国独特の味。お決まりのフィッシュアンドチップスのフィッシュにはヒラメやタラもよいのですが、私のお勧めはカレイです。ほかにも黒豆とコーンのフリッターやアンチョビと野菜の煮込みなど凝ったメニューがたくさんあります。これだけでも英国の食文化の多彩さがお分かりいただけるでしょう。
かつては太陽の沈まない国、大英帝国を誇った国ですから、世界中からおいしいものを集めていた歴史があります。シェリーやポートワインはその象徴ですし、当時の上流階級は豪華なコース料理を食べていたそうです。しかし英国人は、ただ享楽的に美味しいものを食べてきたというよりも、食を文化としてとらえ、さまざまなテーブルウェアとマナーを通して脈々と受け継ぎ、豊かな食卓習慣を守り続けてきたのです。多くの陶器やシルバーウェア、リネン類が各家庭で何代にもわたって受け継がれている事実がそれを証明しています。
またワイン、ポート、シェリー、マデラを楽しむ器具や調度品はもとより、そのマナーにも、お酒を文化として成立させた経過が見て取れます。
実は私が初めて訪れた外国は英国でした。学生時代、初めて目にした外国の風景は、今でも強烈に印象に残っています。不思議だったのは、パブで室内に空席があるにもかかわらず、極寒の外の席でコートの襟を立て、読書をしながら悠々とエールを飲むジェントルマンの姿。思わず話しかけてみると「これだから集中して読書ができる」と言いました。
なるほど、彼らはつかの間の休息をしているわけではなく、食を嗜むことによりステイタスを持ち、また頭をクールダウンさせて哲学にふけるのかもしれない、と少し英国人が分かったような気になったものでした。今回は英国の食の素晴らしさの一部をお伝えしましたが、本当に高い食文化を感じることができる国です。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。
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