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3月 02 2008
酒のある風景 グルジア プリント
2008/03/02 日曜日 00:00:00 JST

受け継がれる古いワイン製造法

著者:料飲専門家団体連合会事務総長 右田圭司

私は異なる2つの文化が融合した国が好きですが、今回訪れたグルジアもまたアジアとヨーロッパ文化が出会い溶け合ったような国です。
長年、周辺国かが、それに屈することなく現在でも独自の文化や宗教(グルジア正教)を持つまれな国といえます。国土の多くは山岳地帯で緑豊かなのんびりと した国ですが、一方で、アゼルバイジャンなどのカスピ海の石油を、黒海そして地中海へと運送するための中継地として重要な役割を担っています。

主な収入源は観光業です。しかし、旧ソ連時代に国策で作った葡萄の大生産地でもあり、ワインやコニャック製造が盛んです。

私はグルジアの伝統的ワイン造り、しかも人類最古のワイン造りの調査をするために遠路はるばるやってきました。

グルジアはワイン造り発祥の地といわれますが、困ったことに発祥地を名乗る場所がもう一つあります。それは中国北西部のウルムチ。
この二ケ所はシルクロードの両端に位置し、どちらも信憑性は高いのですが、特定するには至っていません。
比較的、古い製造法が受け継がれているのがグルジアだそうです。
いずれにしても人類がワイン造りをはじめた奇跡に感動すら覚えます。

もちろん最近では現代的なワイン製造が行われており、高級ワインも増えていますが、その大半はタンク発酵です。
伝統的方法はグルジアの国立試験  場やワイン博物館によって保存されています。

今回は幸運にも政府の招待を得て現地に入ったおかげで、試験場でその製造過程を目の当たりにすることができました。

グルジアワインの伝統的な造り方は本当に変わっています。まず、丸太をくり抜いた容器の中に葡萄を入れて足でつぶします。
ここまでは他国の伝統的なワイン造りでも似たものが見られますが、この後が違います。それを木のたるではなく、「クエブリ」と呼ばれる素焼きの大きな壷に入れます。

作業を効率的に行うためでしょうか。地下にクエブリを埋設して上から葡萄を入れるようになっています。そして同じ素焼きの蓋をして翌年春まで発酵させます。

素晴らしいのは、発酵中に出る炭酸ガスが素焼きの容器の底から抜けていくというカラクリ。何と実用的な容器なのでしょう。
翌春、柄杓で「もろみ」をくみ出し、絞って出来上がりです。

実はグルジアの土地は大変肥沃なため、葡萄は大粒でやや水っぽい品質になってしまいます。これではワインをつくっても薄く味気ないワインになる可能性があります。
おそらくその弱点をカバーするために、果皮を取り除かずに発酵、熟成させる「うま味を逃さない方法」を経験的に編み出したのでしょう。

私はこれを自然的シュールリー法(澱引きをしないワイン製造法で古くからフランスロワール地方のムスカデワインに利用される製法)だと思います。

人間はおいしいものを生み出すためなら、素晴らしい知恵を絞るという事実を実感させてもらいました。

田舎へ行けばクエブリを使用した自家製ワインを造っている家庭はありますので、運がよければ飲めるかもしれません。

それはきっと、かつて日本の農家などで作っていた「どぶろく」にも似た心にも体にも優しい味がすることでしょう。

素焼きの「クエブリ」

 
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